2010年2月20日土曜日

思い出のコパ・アメリカ

3月にメデジンで南アメリカ競技大会という南米各国が参加する大きなスポーツ大会があるのですが、国際的なスポーツ大会と言って思い出すのが9年前のサッカー、コパ・アメリカのこと。その時メルマガに書いたものを再掲します。南米って侮れないなとこのとき実感しました。

以下、再掲記事。

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 ラテンアメリカで行われる大きなサッカーの国際大会の一つにコパ・アメリカ(あえて訳すなら「アメリカ杯」とでもなりますか)というものがあります。私はこちらに来るまでそんな大会の存在さえ知らなかったんですが、1999年にはパラグアイで開催され、そのときに、「次の2001年大会はコロンビアでやるんだよ」と、夫の甥っ子に教えてもらいました。そのせいかどうなのか、市の繁華街や大きな道路の改良工事も数か月前までには大体終わり、市内に新型バスまで走り始めました。夫は、そういう工事はコパ・アメリカとは無関係だと言っていたんですが、麻薬や誘拐やテロで有名なコロンビアがここでがんばってイメージを回復したいと思っていないとは言い切れない気がします。6月に入ってからは、スタジアムで警官たちが行う暴動対策訓練の映像も見かけました。客席の屋根からいっせいにロープで降りてきたり、特に問題のある客を客席から連れ出すためのロープシステム(何と言うのかわかりませんが、ロープにフックを引っかけて滑らせる、ビルからの人の救出なんかに使われる、あれです)などがあって、力の入り具合がうかがわれます。開催はいよいよ7月の11日。

 仕事から帰ってきた夫が「コパ・アメリカ、中止になったらしいよ」と言ったのは6月28日のことでした。いかにラテンアメリカとはいえ(偏見)、あと2週間というところでこんな大きな国際大会が中止になるなんてことがあるだろうか、と半信半疑だったんですが、新聞を買ってみたら、確かにそう書かれていました。

 どうも、直接の原因は、コロンビアのサッカー連盟の役員がFARCという大きなゲリラ組織の一つ(もう一つはELN)に誘拐されたため、治安が問題視されたということのようです。コロンビアの治安がよくないことなんか、何年も前、ここを開催国に選ぶときからわかっていたはずなのに……。誘拐された役員氏は既に解放されたものの、新聞によれば、コロンビアでの開催は中止、別の国で開催するということで、ブエノスアイレスなどが候補地に上がっているようでした。

 もう少し詳しいことがわかるかと、午後7時のテレビのニュースを見てみました。そしたらなんと、「コパ・アメリカはコロンビアに戻ってくるかもしれません」とアナウンサーが言っているではないですか。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで南米サッカー連盟の役員会議が行われ、30日の土曜日に、どこで開催するかを最終決定することになったようなのです。ここで、誘拐されていた役員氏がテレビに出ていましたが、どこかよくわからない屋外でインタビューされながら、疲れ切った感じで、「FARCは非常に規律がとれていて、待遇も非常によかった」とゲリラを誉めていました。本人は「家族には身代金を払うほどの金はなかった」と言っていたようで、なぜ解放されることになったのか、私にはよくわかりません。

 そして30日、出先でたまたま昼のニュースを見たら、「コパ・アメリカはコロンビアで開催されることになりました」とアナウンサーが伝えていました。ブエノスアイレスはコロンビアよりも時間が2時間早いので、コロンビアでは午前中のうちに結論が出てしまったようです。前評判では連盟の10か国のうち7か国がコロンビア開催を支持しているということだったので、それほど意外とは思いませんでした。コロンビア開催に強硬に反対したのは、アルゼンチンやブラジルなどの、国も大きいしサッカーも強そうな面々だったようなのですが、連盟の議長がコロンビア開催を推したらしいです。

 が、その日の夜、例によって7時のニュースをちゃんと見たら、コロンビアで開催することはするが、それは2002年の1月、ということになってしまっていました。あと半年で治安が改善されることを期待したのでしょうか。あまり変わりがないような気が……。

 でも開幕予定日までもう10日あまりしかないという状態なので、その日のテレビのCMでもコパ・アメリカ関連のものはまだ残っているし、スーパーに行けば「コパ・アメリカチケット当選者」の一覧は張り出されているし、ディスカウントショップでもなぜかブラック&デッカー社製の電動ドリルにサッカーボールがおまけでついているし(ブラック&デッカーのロゴ入り)、私たちはこの週末に引っ越してそのついでに古かったテレビを買い換えたんですが、テレビにまでサッカーボールのおまけがついていました(テレビ自体はどうもコパ・アメリカを狙ってフェアをやっていたようですが、ボールにはなぜかオリンピックのマークが)。テレビを運んでくれた若い店員はテレビよりもサッカーボールに気を取られていて、彼が目を離した隙に私たちがボールをテレビの箱にしまってしまったら(テレビの動作チェックをしたので箱が開いていたのです。でもボールを隠そうと思ったわけではありません)、「ボールどこ行きました?」と焦っていました。彼もコパ・アメリカを楽しみにしていたんだろうなと思うとなんだか気の毒にさえ思えてきました。だって、半年先にちゃんとコロンビアで開催される保証はどこにもないわけですから。

 引っ越しの途中で体調を崩したこともあり、新しい住まいの片づけなどでばたばたしていて、次にニュースを見たのは7月6日の金曜日でした。寝起きのぼんやりした頭でテレビを見ていたら、国内民放の一つが「コパ・アメリカはRCNで!」というCMを流していて、「まだそんなことを言ってるのか」と思っていたら、続く朝のニュースでアナウンサーが「11日にはコパ・アメリカが開幕します」。「はあ?」。一瞬、本気で、これまでの騒ぎは夢だったのかと思ってしまいました。というわけで、この間の詳しいいきさつは全然知らないのです。

 でも実際に11日になるまでは信用できないと思っていたんですが、11日には本当にコパ・アメリカが始まりました。当日のニュースで、開幕試合が行われるバランキージャでは「(本来は2月の)カーニバルが7月に行われています」と言われていて、それは言葉のあやだと思っていたら、実際にカーニバルでやるようなパレードが行われたようです。そういえば、開会式のだしものもカーニバルっぽかった。それにしても、途中であれだけ揉めたのに、マスコミ始め、みんなが素直にお祝い気分なのはすごいことのような気がします。開会式には女性人気歌手のシャキーラが出る予定だったようなのですが、彼女は結局来ませんでした。ひょっとするとこれで国内の人気を落としたかもしれませんが、普通の状態ならともかく、これだけすったもんだしたあとなので、責められない感じがします。

 他にも予定通りにいかなかったことはいくつかあり、出場予定国のアルゼンチンとカナダはキャンセルになって、代わりにホンジュラスとコスタリカが入りました。カナダはラテンアメリカではないので招待だったと思うんですが、これはもう付き合いきれないと思ったのかもしれません。前回、パラグアイ大会には日本チームが招待されていたのにコロンビアのときに招待されなかったのは、実は治安に不安があるからでは、と勝手に勘ぐっていたのですが、どっちみち今回の状態ではキャンセルになっていたのではないでしょうか。

 バランキージャ、カリ、メデジンの3都市に分かれて予選リーグを行ったあと、大会はペレイラ、アルメニア(という町があるのです)、マニサレスで分散して行われるトーナメントを経て、最後に3位決定戦と決勝戦のためにボゴタにやって来ます。というか、少なくともその予定。コロンビアに住んでいると、何事も、実行されるまでの予定は未定であるということを何度も思い知らされるのですが、まさかこんなに国際的な場面でそんなことが起きるとは思っていませんでした。まだまだ甘かったです。

 コロンビアチームは初日にベネズエラと対戦し、そこを勝利で飾ることができましたが、はたしてボゴタまでやって来ることはできるでしょうか。というよりも、大会自体はこのまま何事もなく無事に終了するのでしょうか。本題とは違うところでドキドキです。この大会、日本ではWOWOWで中継されているそうです。

8 件のコメント:

  1. いやはや、これぞラテン!と思わせる出来事でしたね(笑)
    9年前と今では少しは変わっているのでしょうか?
    治安もそのときよりかなりよくなっているみたいですし。
    (でも日本の外務省は、州によってはまだ危険地域に指定してますね。)
    日本に来て長いスペイン人が『日本人はどうしてそう頭が固いんだ、何から何まで決めた通りにするのではなく柔軟性を持て』みたいなことを言って、スペインに帰国しました。
    でもまた日本に戻ってきて『あんなにいい加減で約束どおりに物事が進まない国はいやだ』と言って日本に住むことに決めてしまいました(笑) スペインで役所に書類を出しても返事に時間がかかるみたいです。

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  2. 9年前と変わっているかは……どうでしょうか。
    大会首脳部が誘拐されることがあったとしても、今回はFARCはないんじゃないかと思います。かなり弱体化していますので。
    あと、サッカーの大会と違ってさまざまな競技があり、スタジアム建設に相当のお金がかかっていると思うので、おいそれと中止にはしないんじゃないでしょうか。開催場所をすぐほかのところに変えるのも難しそうです。
    スペインもそうなんですね。柔軟性といえばきこえはいいですが……。ただ、「あー、こんな適当でも一応ものごとは回っていくんだな」と安心したりします。
    役所といえば、今月中に外国人登録の更新に行かなくては…。一度忘れて期限の2週間後くらいに更新に行っても何事もなく受け付けてもらえましたが(笑)。

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  3. いつも拝見させてもらってますコロンビア人男性と結婚している者です。
    コロンビアについていろんな話を楽しみにしています:)

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  4. 匿名さん、コメントありがとうございます。
    日常に密着したコロンビアの話を書いていくと思いますので、よろしくお願いします。

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  5. 去年の年末に初めて旦那とコロンビアへ行きました!
    カリ、イバゲ、ボゴタ、サン・アンドレスと楽しい旅行
    でしたが、物価が高いのにはびっくりしました!
    ボゴタでの生活はどんな感じですか?
    もうコロンビアでの生活は長いのですか?
    投稿でこんな事を聞いていいのかわかりませんが。。

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  6. ボゴタ生活は3月で11年になります……。
    でもイバゲとサン・アンドレスには行ったことがないんですよねー。
    物価は中南米にしてはけっこう高いらしいです。生活必需品もだんだん値上がりしてきて厳しい感じ。
    ボゴタの生活は、慣れてしまうと普通です。東京出身の人とかにはすごく退屈と感じるようです。

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  7. 11年ですか! それは長いですね~
    住む地域にもよると思いますが一人で外出したり
    できますか?
    名前を忘れてしまいましたが地区にレベル?があって
    番号が付いてるのですよね?
    その番号によって公共料金も違うとか。。
    また、それについて時間がある時に詳しく教えて下さい!
    旦那の説明が良くわからなくて。。

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  8. 私はひとりでスーパーに行くにも何カ月かかかりましたが、人によっては最初からがんがん車であちこち行ったり、出かけたりされてますよ。
    というか、子供さんがいる人だとどうしても出かける必要も出てくるし、お母さんは強いですね。
    地区にレベルがあるのは私も人に聞いて初めて知ったんですが、1から6まであるようです。
    うちの夫の親戚とかは全然そういうのを話題にしないので知らなかった……。個人的に、お金持ちの地区に住んでいる人ほど気にされるような気がします。

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